今日は、津和野の殿町通りの昔を楽しく伝えてくれるこの一節を選びました。
殿町は、武家屋敷の門の並ぶところだが、下手のカトリック教会の洋風の建物が武家屋敷のそれと不思議によく釣合っている。その頃スペイン人の神父さんがいて、ボル・エヘンプロとつぶやきながら、たどたどしい日本語をしゃべった。この教会の垣根のすきまから、隣りの女学校に忍びこむことができる。女学校のポプラの葉はすもう(葉をからませて引きあう、切れた方がまけ)が強かったから、よくこれを拾いにいった。落ちている葉を拾うのに、何がいけないのか、小使いのおやじは必ず、竹箒を持って追いかけてきたものである。
安野光雅著『津和野』 キッポのうた:より引用